著者は高橋伸夫、東大経済学部教授。
バブル前後を含め、数十年経済学界に身を置いてきた著者の主張は簡潔だ。
人は金で動くのではなく、金銭を仕事の動機付けにするのは間違いである。
日本型年功主義を見直そう、というものだ。
このことを示す上で非常に興味深かったのはある実験例で、 被験者にパズルを4セット解かせるというものである。 2セット終わった所で自由時間を入れるのだが、 休憩時までに解いた数に対して報償を支払う場合(A)と、 2.支払わない場合(B)で、自由時間の過ごし方に差が見られるというのである。 ちなみに休憩時間は実験者は部屋から出て行き、周りに人はいない。
違いというのは、片方が自由時間にパズルを解かず、休憩を取る割合が多いというのだが、 休憩が多いのは報酬が支払われた(A)ではなく、(B)なのである。 (A)の場合は「報酬のためにパズルを解く」事になるのに対し、 (B)の場合は「パズルを解くこと自体が楽しい」状態になるからなのだろう。 これは誰にでも経験があることではないだろうか。
人が最高のパフォーマンスを発揮するのは、お金のためにがんばっているという状態ではなく、 「そのこと自体が好きであるため、いくらやっても苦にならない」という状態だろうということは想像に難くない。 成果主義ではこういう状態になることの助けにならず、むしろ年功制で生活に対する保障をした上で、 仕事の内容で報いる日本型年功主義の利点を再確認することが必要なのだという。
金銭が全くモチベーションになることはないと言っているわけではないが、 弊害の方が多いですからやめた方がいいですねという話である。 自分を含め、人のパフォーマンスを上げる「動機付け」についての理解が深まる上、 日本型経営について興味深い記述もある、良著でした。







